海の向こうで
「着いた…」
飛鳥になんとかSiriの道案内で誘導させながら、私達は海へと着いた。
もう5時で真っ暗だし、12月だから寒くて誰もいない。
「ここに来たかったの?」
飛鳥は不思議そうだ。
そりゃそうだよね。
この寒いのにいきなり海に行くバカがどこにいるか。
…ここにいるけど。
「そう。私ね、嫌なことがあったら大体海に行くの」
私は海を見ながら、そう呟いた。
「…」
あ、言い方が悪かったか。
「あ、ごめん。飛鳥の話を聞いたことは嫌なことじゃないんだけど。けどね、飛鳥はそれについて悩んでるでしょ?それを、海に置いていくの。
わーって叫んで、そのまま振り返らない。そうすれば、なんか心が軽くなる気がするんだよ」
私は飛鳥に微笑みかけた。
「言葉に出すのって大事だと思う。私は叫ぶ対象が海かなって思ってるから今回海についてきてもらったけど、山だって、誰もいない部屋の中だっていいと思う。誰にも聞こえないところで、わーって叫ぶ。それだけでも、ちょっと救われたような気がするんだよ」
「…」
飛鳥は無言だ。
この無言がキツイ。
『意味ねーし、そんな甘く見るなよ』
そう言われるのかと思ったけど、違った。