海の向こうで




「やだね」



ニヤリと笑う茶髪男。



腹が立ったけど、腕は引っ張ってもビクともしなかった。



結局私は大西海に追いつかれてしまった。



「ったく、ちょこまか逃げんなよ…」



流石に大西海も疲れたらしく、はあはあとベンチに手をつけて息を弾ませている。



「だって…」



私はふいっと大西海から目を逸らした。




わざわざここまで息を切らして探してくれたのは申し訳なかった。



「え、じゃあもしかして君が海の双子の片割れの海華って子?」



と話しかける茶髪男。



…何で間に入ってくるの。



「そうだけど」



と答えるけど、一体この茶髪男は誰なの?



「オレは春瀬 飛鳥(はるせ あすか)。海のダチだよ。けど、暴走族には入っていない」




「…どういうこと?」




「そのまんま。海のダチではあるけど、暴走族じゃない」



ん?



暴走族って暴走族としかつるまなそうなのに。



…なんかへんな人。



それがこの人…飛鳥の第一印象だった。



「何で暴走族に入らないの?」



と聞くと、答えはかなり意外だった。



「妹を危険な目に遭わせたくないから」



「え!妹?」



失礼だけど妹がいそうな感じじゃない。


「そ。日向っていって、オレの自慢の妹なんだ。まだ6歳くらいかな。



だから海とは目立ってつるむ時はあんまないな。大体は、オレがこっそり倉庫に行くって感じ。オレは暴走族に日向を連れ込んでもいいんだけど、だいぶ前から親が反対してたからなー」



そうなんだ…。





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