海の向こうで



すると、彼はこんなことを口にした。



「ちょっとだけ、海寄ってもいいか」



いきなり。



「…?」



飛鳥がまだ何か言いたそうだったので、私は首を傾げて、先を促す。



「そういえば昨日、何も吐き出さずに帰っちゃったなーって」



「あ、確かに」



と私は大切なことに気づく。



私のバカ、何のために海に呼んだんだよ〜!



もう。



「てか私がついていっていいの…?」



「うん」



こくりと普通に頷く飛鳥。



こういうのって、誰にも聞かれたくないんじゃないの…?



まあいいか、飛鳥がいいって言うんだし。



私達はバイクに乗り、しばらくして海に着いた。


海には誰もいなかった。



…よかった。



しばらく、無言が続く。



< 180 / 232 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop