海の向こうで
すると、彼はこんなことを口にした。
「ちょっとだけ、海寄ってもいいか」
いきなり。
「…?」
飛鳥がまだ何か言いたそうだったので、私は首を傾げて、先を促す。
「そういえば昨日、何も吐き出さずに帰っちゃったなーって」
「あ、確かに」
と私は大切なことに気づく。
私のバカ、何のために海に呼んだんだよ〜!
もう。
「てか私がついていっていいの…?」
「うん」
こくりと普通に頷く飛鳥。
こういうのって、誰にも聞かれたくないんじゃないの…?
まあいいか、飛鳥がいいって言うんだし。
私達はバイクに乗り、しばらくして海に着いた。
海には誰もいなかった。
…よかった。
しばらく、無言が続く。