海の向こうで
「え、だってなんか…」
私は口ごもる。
確かにどちらもだいぶ他人行儀だ。
「オレらのことは名前で呼んでくんないと。てか海とは家族になるんだろ?」
と言われてそういえばそうだったと今更気づく。
家族なのにフルネーム呼びはないよね。
あと…私って名字が大西になるってことだよね。
…なんか複雑。
難しそうな表情をした私に慌てた春瀬さん…じゃなくて飛鳥さんがこう助言してくれた。
「名字が変わったって自分自身は変わんないじゃん。だからさ、そこまで深く考えなくてもいいんじゃね?」
その言葉が心の中に刺さった。
確かに言われてみればそうだ。
「うん…」
私はコクリと頷いた。
「お前に喜んでほしくて…ビックリさせたくて海はそれを黙ってたんだ。
だから許してやんなよ」
え…。
私はビックリして大西海…じゃなくて海をみた。
「飛鳥、それ言うなよ」
顔を赤くさせる海。
「ほんとは言おうとは思ってたけど...ちょっとびっくりさせたくて。嫌な思いさせてごめん」
海はわざわざ頭を下げてくれた。
「え、ちょっと顔上げてよ!!全然大丈夫だから!
戸惑っちゃったけど...慣れて行けたらいいと思う」
素直に自分の思っていることを言った。
確かに最初は嫌...っていうか戸惑ったけどちゃんと理由を聞いたら頷けた。
「よかったな」
と春瀬さんが微笑む。その笑顔は向日葵みたいで優しかった。
「じゃあオレは帰るわ。日向も待ってるし」
春瀬さんは手を振って行ってしまった。