海の向こうで
え、ちょ、ちょっと待って。
「飛鳥発音上手くない?」
「まーね。これでも一応小さい頃は英会話とか習ってたもんで」
と言ってすぐにまた参考書に目を戻す彼。
にしても、Do you know〜?だけでこんなに綺麗な発音ができるとは。
もしもっと難しくて長い文章だったら、きっともっとカッコいいんだろうな。
「…」
しばらく無言が続く。
こうやって、自分を主張しすぎないのも好き。
あんまり主張しすぎると、自分のことを褒めて欲しいのかって思っちゃう。
かまちょだな〜、って思っちゃう。
普通の、というか程々のかまちょならいいけど、極度のかまちょは耐えられない。とにかくめんどくさい。私が面倒くさがりやだから、こう思ってしまうかもしれない。
「ん。他は合ってる」
と飛鳥が私に目を向ける。
え、ちょい待ちこれは近い…!
なんで今まで気づかなかったの…???
心臓がばくばく音を立て始める。
いや、ちょっとこの音大きすぎない?
ちょっと近づいただけなのに、いつだってキミにはドキドキしちゃんだね。
付き合いたての頃からそれは変わらないよ。
いつも慣れない。新鮮。でもそれが好き。
「よかった。ありがとう」
私は真っ赤な顔だと分かっててにこりと飛鳥に微笑む。
「…目、瞑って」
と飛鳥に言われる。
え、キス?かな?
私はちょっと期待を込めて目を閉じる。