海の向こうで

「…うみちゃん。飛鳥さんに、ちゃんと聞いてみよう」



息が整った頃に、鮎斗くんが言った。



「…」



ちゃんと聞いて、それで



『実はこいつ、新しい彼女なんだよね。俺海華のこと飽きてきたし、そろそろ彼女変えようかと思って。だからついでに今別れてくんない？』



とか言われたらどうしよう。



そしたら、私桜龍に行けなくなっちゃう。



だって飛鳥は桜龍のメンバーだし、桜龍に行けば飛鳥に会うことになっちゃうじゃん。



その度に恋心をしまって、無理しなければならないの…？



そんなの、嫌だよ。



「でもさ、はぐらかされるよりはっきり聞いた方がよくない？もしかしたら勘違いかもしれないしさ。もし勘違いだったとしても、すぱっと振られた方がよくない？浮気なんてされたくないでしょ」



「…」



確かに、それはそうだ。




「…ごめん。ちょっと考えさせて。今、話したくない」




「…分かった。ごめんね」




鮎斗くんはちょっと眉を下げて微笑むと、私の元を去っていった。