海の向こうで



それから私の生活は変わった。



なにをするにもやる気が湧かない。



お腹も一切空かない。着替えもしない。お風呂も入らない。



不潔だよね。そんなん、とっくのとうに分かってる。



バカみたいかもしれない。でも、飛鳥にもう2度と会えないって思うと、もうなにをしても意味がないように感じた。



学校も行かなくなった。



朱里も海もたまに来てくれたりして、なにかをドアの前に置いていってくれるらしい。



でも、それを取りに行く気力さえ湧かない。



こんな私のためにありがとう。



そう言いたいのだが、その言葉ももう出てこない。



でも、ひとつだけやりたいことがあった。



だから私は、最低限の支度をして外に出た。



「…寒い」



外は寒くて、雪がちらついていた。



今が冬でよかった、こうでもしなければ汚い体を隠したりなんかしなかったから。



私はおぼつかない足取りで、ある方向へと向かった。そこまではやくはなかったけれども、一度も止まろうとはしなかった。



どれくらい歩いただろうか。しばらくすると、お目当ての場所が見えてきた。



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