海の向こうで

その言葉で、俺には何が起きたか分かった。



離婚するから、こんなにも落ち着いているんだ。


それが分かって、どうしようもなく叫びたくなった。



前は、父さんと母さんが喧嘩してても、すぐ収まると思ってた。



喧嘩しても仲がいいと思ってたから、俺は何も気にしなかった。



それが、いけなかったのかな。



「それに、鮎斗あなた暴走族の子とつるんでるんでしょ」



と母さんがまた口を開いた。



「暴走族の子とはつるむのはやめなさい。へんな薬でも飲まされたらどうするの。殴られて一生治らない傷をつけられたらどうするの」



「…」




なんだよ、その偏見。



海さんはこんなにも俺に尽くしてくれてるのに。



「私について行くにしても、父さんについて行くにしても、暴走族の子とつるむのだけはやめて。あなたも危ないし、私たちだって怯えながら生活していかなければならないわ。それに、もし私たちだけで被害が留まったならまだしもあなたの周りの友達に被害が及んだらどうするの」




「母さん」



俺はか細く呟いた。



「俺、海さん以外に、友達なんていないよ」



と言うと、母さんは…そして父さんも目を見開いた。