海の向こうで
「俺、ずっといじめられてたんだ。だから友達なんていなかった。俺が友達だと思っていた人も、何度も俺を裏切った。俺を見放した。
そんな時に助けてくれたのが、海さんだったんだ。もうこんな思い、したくない。だから俺は暴走族の人とつるむようになった。自分が強くなれば、あんな風にいじめられることだってないと思うから。
それに、暴走族ってのは普通はレイプとかはしないもんなんだよ。自分たちだけで、自分がもともと持っているもので戦うだけだよ。だから、周りの人や母さんたちは普通は狙われないはずなんだ。暴走族がみんな、周りを脅かす存在じゃないんだよ」
と告げると、母さんは少し黙った。
「…そう、だったのね」
絞り出したような声だった。
「私たちがくだらない喧嘩をしていたから、言えなかったの…?」
と母さんが尋ねた。
「うん。そうだよ」
と俺ははっきりと告げた。
なにも、母さんだけが悪いわけじゃない。
母さんだっていろいろある中苦しんでいたのは知っている。
けど、子供を蔑ろにするのはよくないと思う。