だから、言えない


きっと、服を買ってもらえない、
洗濯をしてもらえない、
お風呂に入れていない…

佐山にとって、私は、
ただの近所のねぇちゃんだっただろうが、
一度佐山のことで、
担任の教師に相談し、
佐山が児童相談所に
保護されたことがある。

ひょんなことで、
あいつの体があざだらけだと
知ってしまったんだ。

どれだけ聞いても佐山は
あざについて答えなかったがな。

だけどな、
児童相談所に保護されたって、
あんなのすぐに家に戻ってしまうんだな、
私がしたことは無意味だったんだ」

片林さんが悲しそうな声で
ため息をついた。

「私は中学に入って部活をしだしたから、
忙しくてあいつとは会わなくなった。
だが、いつも気がかりで、
わざと遠回りして、
あいつの家の前を通って通学していた。


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