だから、言えない
そして、再会したのが、
私が高校生の時。
部活の遠征で帰りが遅れ、
夜遅くに自転車で帰宅中、
近所のコンビニの駐車場で
偶然あいつを見たんだ。
大きくなっててびっくりしたが、
夜遅くにコンビニの駐車場で、
小学生が一人で
コンビニ弁当を食べてるなんて、
おかしな光景だろ?
部活終わりでへとへとだったが、
さすがに声をかけた」
かなり重苦しい話に、
私の気分はどんより曇り空になってきた。
だけどきっと、佐山さんは
もっと暗い気持ちで
子供時代を過ごしてきたのかもしれない…。
「私は気づかなかったが、
その日、あいつは言ったんだ。
私と出会う前から、
あいつの毎日の食事はコンビニなんだと。
だから私は言った。
食べ物がないなら、うちに来い、と。
一度も来なかったがな。
それから私は大学に行き、
実家を出たが、
弟たちから話を聞くと、
あいつは六年生になったあたりから、
非行に走ってしまったらしい。
中学の途中からは落ち着いたみたいだが。