だから、言えない


「店は適当でいい。
全部お前任せる。
以上」


でたよ、丸投げ。

ま、好きに決められるからいいけど、
店どうしよっか?

去年のとこはあんまりだったしな。



その日の夕方、
この小さな町にある、
数少ない店の候補を頭の中であげながら、
帰ろうと事務所を出ると、
駐車場で、村薗さんと竹本さんが
楽しそうに話している光景が目に入った。

竹本さんのスマホを
村薗さんが覗き込み、
笑顔で何か言っている。
竹本さんがあざとく首をかしげて、
村薗さんが竹本さんの頭を撫でた。

ふーん…。

村薗さんに触れられてるなんて…。


やっぱり妙に仲いいよね、
あの二人。

あたしがどれだけ村薗さんを誘っても、
あんな雰囲気にはならないのに。

なんで、色気なんか皆無の竹本さんに?

ほんと、竹本さん、邪魔。


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