だから、言えない
第五章 裏切り




大晦日の朝、
俺は竹本と駅に集合して、
普段は使わないローカル線を走る
一両編成のワンマン電車に乗った。

専務の家は俺たちの職場より、
さらに田舎の方で、
バスか、一時間に二本の
このワンマン電車でしか行けないらしい。

車が一番便利だけど
専務が一緒に飲んで欲しいから、
車はやめてほしいと俺に頼んできた。

今日専務の家に行くと決めたのは、
1日竹本と一緒にいれるからであって、
俺はそもそも
人が多い集まりは苦手だし、
知らない家族の中に入って、
みんなでもちつきをするなんて、
普通に緊張する。

俺みたいな部外者、
「え?誰こいつ」とかならねぇかな?


今日の竹本はジーンズにブーツ、
ダウンにマフラー、
もこもこの手袋と毛糸の帽子まで
かぶってる。

全体的にもこもこしててかわいい。

それに、今日は確かに寒い。
天気予報で、
山の方は雪だとか言ってた。

そうか!
専務の家は山の方か。


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