だから、言えない


大晦日にローカル線の電車なんて、
誰も乗ってない。
俺たちと、
おばちゃんが一人
離れた席に座ってる。


「佐山さんは大晦日、
いつも何をしていますか?」

竹本が楽しそうに聞いた。

「別に、何も」
「テレビは何を見ます?」
「んー、色々だな」
「そうですかー」

俺ってば、
もっと楽しく話せねぇのかよ。
せっかくこいつと二人なのに。

俺と二人で退屈だとか、
思ってねぇかな…?

「お前さ…いつも実家帰ってねぇの?
近いだろ?」
「近いですけど、
帰りたくないんです」
「なんで?」

俺がそう聞くと、
竹本の表情がちょっと曇った。

「別に言いたかねーなら、
言わなくていいけど」

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