だから、言えない


「結局、大学にはほとんど行かず、
パチンコに行ってたのが親にバレて、
実家に戻ってきたのですが、
それからずっと無職で、
毎日パチンコ、たばこ、酒ばかり。
両親を脅してお金をとっていくけど、
両親がそれを拒むと暴力をふるう…。

私は、優しい両親に
あんなことをする弟が憎くて、
許せないんです」

竹本は拳を握りしめていた。

「仲がよかった両親は
喧嘩ばかりするようになりました。
お互いに、
あんな子を生んだお前が悪いとか、
あなたが甘やかしたからとか…
そんなこと言い合うんです。

私、疲れてしまいました。
私の財布のお金は
どこに隠しても抜かれるし、
暴力や、怒鳴り声、けんかの音、
何もかもが…
いやになりました。
気づいたら私は
眠れなくなってたんです」

竹本があまりにも強く
拳を握りしめてるようだったから、
俺はその小さな手を
包むように握ってやった。

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