だから、言えない


「優くんのトランペット…
もうきけない…
そんなのやだもん…。
優くんは私の目標…
優くんみたいになるのが私の夢…
だから、いなくなったらやだ…」

毎日のように父さんはその逆を言っていた。
もう俺のトランペットなんて聞きたくない。
音楽なんて意味ないもの、
さっさとやめろって。

だから、ことちゃんが泣きながら
言ってくれたその言葉、
俺はすごく嬉しくて、
中学生になったら、
音楽はやめようと思ってた
俺の考えを変えた。

「俺、中学になっても
トランペット続けるよ。
吹奏楽部に入るから」
「何それ?」
「マーチングとは違うけど、
色んな楽器と一緒に演奏するんだよ。
俺はここを卒業するけど、
ことちゃんと同じ音楽の世界にいるから」
「本当?」
「うん」
「わかった!」

ことちゃんはいつも笑顔いっぱいの子だった。
このときも、
俺にまぶしい笑顔を向けてくれてた。

俺はいつも
ことちゃんの笑顔を見るだけで、
嫌なこと全部忘れることができたんだ。


こんな笑顔いっぱいの人になれたら、
毎日は楽しくなるんだろうか?

周りの人を幸せにできるんだろうか?

俺もこの子みたいに、
笑顔が絶えない人間になりたいなって
いつの間にか思ってた。


中学に入ると、
ことちゃんと会うこともなくなったけど、
俺には親友ができた。


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