だから、言えない
佐山 連。
初めて話したのは、
中学に入って
一番最初の体育の授業だった。
「体育は1組と合同かよ」
「やだなー。
1組って、佐山いんじゃん」
「あの入学式で
いきなり先生とやりあってた奴?」
「そう。あいつ、
父親が刑務所とか入ってるレベルの奴だからな」
「お前、小学校同じだったのか?」
「うん。
六年になったあたりから超荒れだしてさ。
昔はいじめられてたくせに」
「まじかよ」
俺のクラスの男子たちが
そんなことを話してたけど、
実は佐山連がどんな顔なのか、
そのときはよく知らなかった。
「俺、佐山。
よろしく」
体育の授業で、
二人一組になるとき、
余ってる人がいたから声をかけたら、
それが連だった。
細くて背が高くて、
ひょろっとしてるけど、
顔は結構整ってて、
大人っぽい顔だった。
「村薗優だよ。
よろしくね」
「あ、お前、
いつも女子に告られてる奴だろ?」
「…え?」
「俺、何回も見たぜ。
体育館の裏とか下駄箱の所で、
お前が女子に、告られてんの」
「君に見られてたんだ…」