だから、言えない


「あぁ、見てたんだ。
さすが連だね」
「辞めんのか?部活」
「どうだろうね…
辞めたくはないけど、
父さんは俺を辞めさせるのに必死だし」
「辞めたくねぇなら、
辞めんなよ。

俺らはさ、
親の人生を生きてんじゃねんだよ。
自分の人生なんだよ。
親の言うとおりになんか、
なる義理ねぇだろ」
「なら、俺は吹奏楽部を
辞めたらいけないね」
「ったりめぇだろ。
やりたいことがあるだけ、
羨ましいぜ。

俺なんか、なーんにもやりたくねぇよ。
そもそもこの世界に執着できることが
一つもねぇ。
全部どーでもいんだよな。

でも、お前が音楽してんの見ると、
俺も嬉しくなんの」
「どうして?」
「そりゃあ、
親友が生き生きと
好きなことしてる姿見りゃ、
嬉しくなんのは当たりめえだろ?」

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