だから、言えない


この会社に入れたことは
私にとって幸運だった。
小さくて、ボーナスだって、
あんまりでないけど、
村薗先輩と再会できたから。

「なに、にやにやしてるの?
ことちゃん」
村薗先輩が私に向かって
そう言ったから、
はっと我に返った。

「シュークリームが嬉しいの?」
「そうですねぇ…」

まぁ、シュークリームが嬉しくて
にやけてたわけじゃないんだけど。

村薗先輩のこと
考えてたからなんだけど。

むしろ…シュークリーム
苦手なんだけど…
でも、佐山さんから
誕生日プレゼントをもらえたのは、
正直嬉しい。
だって、佐山さんって、
私のこと嫌いだと思ってたから。

「よかったな、連」
「あぁ」
佐山さんが無表情で
おにぎりの包みをはがしながら答えた。


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