だから、言えない


「あ、佐山さん」

どうやら佐山さんも用が済んで、
ここから出て行くところだったみたい。
出入口付近で
大きな棚によじ登る私を見つけてしまった。

「お前、危ねぇだろ!やめろ」

ちぇっ…ばれちゃったか。
いつも誰もいない時は、
こうやってるのにな…。
本当はだめなの知ってるけど。

私が、棚から降りるより先に、
佐山さんが、両手で私の体をもちあげて、
棚から引きはがした。
そんな、カブトムシを
木からはがすみたいにしないでよ。
私が小さいということを思い知るじゃない。

「だって、脚立出すの面倒なんですよ」
「はぁ?怪我したらもっと面倒だろうが」


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