だから、言えない
「私は背が低いので羨ましいです。
きっと、佐山さんが見てる世界は、
もっと広いんでしょうね。
私が見えないものも、
見えるんでしょうね」
「そんなかわんねーだろ」
「私、幼稚園にいた頃、
将来の夢は、
キリンになることだったんです」
「おいおい。
急に今思い付いたネタみたいな話、
しなくていいから」
「いえ、本当ですよ。
私高いところが好きなんです。
色んなものが見えるから」
さすがに今は
キリンになりたいとは思わないけど、
展望台や、ビルの屋上とか
大好きなんだよね。
「佐山さんの身長なら、
色んなものが見えそうで、
羨ましいです」
佐山さんが穏やかな顔で、
ふっと、小さく笑った。
おお、こんな顔する佐山さんは珍しい。
「竹本…あのさ…」