だから、言えない


佐山さんは驚いた顔をして私を見つめた。

「佐山さんは、一日の中で、
私が一番が見ている人ですもん。
何を食べてるかは
皆より知ってると思います。
目の前に座ってるので」

と、私が言うと、
佐山さんは腕で顔を隠した。

「優より?」
「うーん、そうですね。
村薗先輩の席はちょっと離れてますし…。
それに、村薗先輩は
外出が多いじゃないですか」

でも、村薗先輩が目の前に座ってたら、
私はずーっと見つめてしまうかもしれない。
そしたら仕事どころではなくなってしまうから、
席が離れてるのはいいことだったかも。

「ところで、片林さんは佐山さんのこと、
凄く心配されているんですね。」

と、私が言うと、
佐山さんの顔は、
いつもの冷たい無表情に戻った。

「さっきの、聞いてたのかよ」

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