だから、言えない
「ごめん、塚尾さん。
カタログならここに…」
私は佐山さんに取ってもらった
包みを開きながら言った。
「じゃ、俺は戻る」
佐山さんが私に向かってそう言いうと、
塚尾さんが
行こうとする佐山さんの腕をつかんだ。
「ちょっと待ってくださいよ、佐山さん」
「はぁ?なんだよ」
佐山さんが不機嫌そうな声で聞いた。
「二人で何やってたんですか?
ずいぶん遅かったですよねぇ」
「何もねぇよ。
雑談しちまっただけ 」
塚尾さんは意味ありげな表情で
「ふーん」と言った。
その後、誰も何もいわず、
この場は収まったのだけど…
少し気になる。
塚尾さんは何でわざわざ倉庫に来たんだろう。
もともと急いでなかったようだし、
さっきの態度からして、
私が遅くなったことより、
私と佐山さんが二人きりで
倉庫にいたことの方が
興味があるようだった。