だから、言えない
王子様だと思った。
誰にも見てもらえなかったシンデレラが、
ガラスの靴を拾ってくれた
王子様に恋したように、
あたしもすぐに
村薗さんを好きになった。
「優ー、早くこっち手伝って!」
向こうの方で、
スタイルのいい美人の女が
村薗さんを呼んだ。
あの人、彼女なのかな?
「ごめんね、
俺、お店に戻らなきゃ。
クレープ屋をしてるから、
よかったら来てね。
じゃあ」
「あ…」
名前を聞きたかったのに、
村薗さんは小走りで行ってしまった。
その当時、あたしは結構モテていた。
クラスの賑やかな男子何人かに告白されたし、この中で付き合った人もいた。
過去の彼氏たちはみんな、
あたしは顔がかわいいとか
美人とかいつも言っていた。
だから、あたしには
村薗さんを落とす自信があった。