だから、言えない


飯田さんの声がして我にかえった。

「竹本ちゃん、そこ男子トイレだよ?」
「え?」

ほんとだー!
私、ぼーっとしすぎて、
男子トイレのドアノブに手をかけてた!
危ない危ない。

「大丈夫?ぼーっとして」
「いえ、今日の晩御飯のこと考えてて…」

嘘だけど。

ちょうどその時、
塚尾さんと村薗先輩が、
私と飯田さんの前を通り、
二人で階段を降りていった。

楽しそうに会話しながら。


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