値札人間
☆☆☆

それからは授業も身に入らず、ずっとほーっとしていた。


イブキがあたしを誘ってくれた。


2人でおいしいものを食べに行く。


つまり、デートだ。


頭の中で何度もイブキとのやりとりを反復してみるけれど、やっぱり実感が湧いてこない。


そもそもイブキはどういうつもりであたしを誘ったんだろう?


好きとか、そういう気持ちがあるんだろうか?


わからなくて、頭をかきむしりたくなった。


「ちょっとアンリ大丈夫?」


ヤヨイに声を掛けられて我に返ると、すでに授業は終わっていた。


みんなそれぞれに鞄を持って教室から出て行っている。


「あれ、いつの間に授業終わったの?」


「5分前くらい。それなのにヤヨイったらずっとぼーっとしてるんだもん」


ヤヨイは呆れ顔だ。
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