値札人間
「ごめん。気がついてなかった」


あたしは照れ笑いを浮かべて帰る準備を進める。


「イブキ君にデートに誘われたから?」


ヤヨイに言われ、あたしは自分の体がカッと熱くなるのを感じた。


「な、なに言ってんの!? デートなんてそんな……」


「でも2人でおいしいもの食べに行くんでしょう?」


隣りの席のヤヨイには全部聞こえていたようで、あたしは黙りこんでしまった。


ヤヨイはニヤニヤとした笑みを浮かべてあたしを見ている。


「イブキ、どう考えてると思う?」


「あたしはイブキ君じゃないからわからないよ? だけど、嫌いな相手と出かけることはないんじゃないかな?」


「そうだよね……?」


少なくてもあたしはイブキに嫌われていないということだ。
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