値札人間
歩きなれた街でも、イブキと2人で歩くと景色が違って見えた。


いつもよりも色鮮やかな町並み。


道行く人たちはみんなイブキを振り返ってみている。


隣りで歩くあたしはみんなの反応に気分を良くしていた。


「最近イツミがしつこいんだ」


2人でカフェに入ったとき、イブキがため息交じりにそう言ってきた。


「そうなんだ?」


あたしはオレンジュースから視線を上げて聞き返す。


「うん。いくら断っても付き合っての一点張り」


イブキは本当に困っているようで、盛大な溜息を吐きだした。


イツミはもう何度も振られているようだ。


だからあたしに向かって逆切れしてきたのかもしれない。


「イツミには気をつけた方がいいよ? 結構怖い子だから」


あたしはそう言い、スマホを取り出した。
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