値札人間
☆☆☆

学校から逃げ出しても、みんながあたしを見て笑っているような気がしてならなかった。


道行く人たちの視線が気になり、常に自分の額に手を当て、数字を隠して早足に歩いた。


あの人もこの人もマスクをつけている。


きっとみんなもう数値が見えるようになっているのだろう。


そう思うと、途端に恐怖心が湧きあがってきた。


もしも自分の価値が他の人よりも低かったらどうしよう?


その数字を見て、みんなはどう思うだろう?


そんなの考えなくてもわかった。


あたしは今まで自分がそうしてきたのだから。


価値が低い人間は、真先にひき捨てられるのだ。


一緒に意味がないから。


自分の価値を下げてしまうかもしれないからだ。


とにかく、今は誰もいない場所へ行きたかった。


一刻も早く家に帰りたかった。
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