値札人間
「どうしたの?」


「やっとひと気のない場所で2人きりになれた」


「え?」


周囲を見回してみると、確かにあたしたち以外に人の姿は見えない。


「ずっと、2人きりになりたかったんだ」


イブキがあたしの肩に手をかける。


その瞬間、あたしの心臓はドクンッとはねた。


緊張が一気にせり上がってきて、イブキの顔を直視することもできなくなった。


「な、なに……?」


ちょっと笑って雰囲気を変えてみようと思ったが、うまくいかない。


気がつけば、イブキの顔があたしの顔のすぐ近くまで来ていた。


唇があと数センチで触れ合ってしまいそうだ。


あたしは覚悟を決めて目を閉じた……。
< 219 / 226 >

この作品をシェア

pagetop