値札人間
☆☆☆

結局、保健室へ行ってもなにも解決することはなかった。


ちょっとした人生相談に乗ってもらったくらいなものだ。


でも、そのおかげで少し気分が軽くなったのも事実だった。


「次の問題を東郷」


突然名前を呼ばれ、あたしは慌てて立ち上がった。


外国語の授業を受けていたのだけれど、まだ教科書すら開けていない状態だ。


「えっと、あの……」


オロオロと黒板と教科書を交互に見つめるばかりのあたしに、先生は盛大な溜息を吐きだした。


「なんだ、授業を聞いていなかったのか」


「すみません……」


素直に謝るしかなかった。


視線をチラリと先生へ向けてみると、眉を吊り上げて怒っているのがわかった。


その額にもまた数字……。


「しっかりしろ!」


怒られるあたしを見てイツミが「あははっ! ダッサー!」と呟く声が聞こえてきたのだった。
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