値札人間
その瞬間だった。


唇のぬくもりを感じることなくイブキが「プッ!」と、噴き出したのだ。


驚いて目を開けると、「もう限界!!」と大声で言って笑い始めた。


なにがあったのかわからず、あたしは呆然として立ち尽くす。


イブキはあたしから体を離すと、その場に転げまわって笑い始めた。


「イブキ……?」


眉を寄せて聞いたとき、建物の蔭から数人の女子生徒たちが顔をのぞかせ、そして笑いはじめたのだ。


その中にはイツミとアマネの姿もあり、あたしは愕然とした。


「あははははは! アンリマジうけるんだけど! 本気でイブキ君に相手にされてると思った!?」


イツミが涙を流しながら笑う。


「アンリの顔、笑えるよね!」


アマネも同じように笑っている。


体温がスッと冷えていくのを感じた。


頭の中は真っ白で逃げ出すこともできなかった。


なに?


なにが起こってるの?
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