値札人間
「嫌よ! あたしはゴウと一緒に食べるんだから!」


イツミはどうにかアマネの手を振り払おうとしている。


しかし、ゴウの目の前ではそこまで乱暴になれないようで、なかなか振りほどくことができないでいる。


「それなら、一緒に食堂へ行こうよ」


見かねて、あたしはそう声をかけていた。


本当はゴウと2人きりでご飯を食べたかったけれど、こうなると仕方がない。


教室にアマネ1人を残していくことにも気が引けていたところだ。


「ゴウ、今日は4人で食べよう? ダメかな?」


「アンリがそう言うなら、それでいいよ」


ゴウは軽くため息を吐き出し、それでも笑顔でそう言ってくれた。


「ありがとう。そういうことだから、イツミもいいよね?」


聞くと、イツミはあからさまに不機嫌そうな表情を浮かべている。


「別にいいけど、あんたたち邪魔しないでよね」


イツミは強い口調でそう言うと、ゴウに腕をからめたまま先に歩きはじめてしまった。
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