値札人間
気にしないようにしていても、これだけ近い距離だとどうしても見てしまう。


「どうした?」


「え? あ、ごめん。なんでもない」


慌ててゴウの額から視線を逸らせる。


「昨日は体調が悪かったみたいだし、本当に大丈夫か?」


ゴウが心配そうにあたしの顔を覗き込んでくる。


そんなに近くで見られたた恥ずかしい。


そう思って身を離そうとした時だった。


あたしはゴウの額の数字が動くのを見たのだ。


「え…‥」


それは一瞬の出来事だった。


額の数字はインクが滲むようにジワリと歪み、次の瞬間別の数字として再び現れたのだ。


あたしは目を見開いてゴウの額を見つめた。


目をこすってみても、数字は変更されたままだ。
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