煙の中の彼
まるで獣のように満足いくまで私を抱いた後
聖はセブンスターに火をつける
「これ、まだつけてんのな。」
私の右手首に揺れるブレスレットを触りながら聖は呟いた。
「大切なものなの。」
「ふーん」
「覚えてたのね。」
「そりゃな。初日から頭抱えてこの世の終わりみたいな顔してたからな。」
「そんな顔してた?」
「おう。ちなみに今日もそんな顔してるけど?」
聖は見透かすようにそっと言ったあと、煙を吐き出した。
動揺なんてしない。
言い当てられるくらいは予想範囲だ。
「そう?疲れてるのよ」
「忙しいのか?」
「さあ?」
「お前自分のこと喋んねぇよな。
検索もしねぇけど。」
「そうかな、」
それは、知りたくない事を知りそうで怖いから。
あなたから離れられない私の弱い所。
でもそれも今日で終わり。
「ねぇ、聖」
「なに?」
「今日さ、」♪〜♪〜♪〜
「悪い、電話」
聖は言葉を遮り携帯に出てバスルームの方へ歩いていった、
チラリと見えた画面に映る名前は見ないふりを続けた”花菜”
伊達に長くセフレしてた訳じゃないから分かってる。
この後あいつはシャワーを浴びてもう一度私を抱きに来る。
でも、今日は
「さよなら聖。」
そう呟いてサイドテーブルにお金をおき私はホテルの部屋を出た。