煙の中の彼
「ここ、よく来るの?」
聖がボソっと私に問いかける。
「ううん、初めて来たの。そっちこそよく来るの?」
「いや、まだ二回目」
「そうなんだ。」
「この近く住んでんの?」
「ううん。会社が近くて。」
「なるほどね。」
「うん。近いの?家」
「うん、近い。」
「そうなんだ。」
まるで夢の中のような気分で私は聖と会話をしていた。
「ま、とりあえずお疲れ様。」
そう言って聖はグラスを持った。
「あ、お疲れ様」
妙にグラスの似合う男だと思いながらカツンとグラスを合わせた。
「すいません、灰皿貰えます?」
ーーーータバコ吸うようになったんだ。
「仕事何してんの?向崎は、」
「インテリアデザイナーのアシスタント」
「インテリア好きだったんだな。」
「まーね。」
そんなたわいもない話がゆったりと二人の間を流れていた。
2時間程ゆったりと話した後
「まだ時間ある?」
「え?」
金曜日23時過ぎ
今帰らなきゃ電車は終わってしまう。
聖は分かってて言ってるの?
「行くぞ。」
「え、待って」
そのまま流れるようにホテルに入り気付けば私は聖に抱かれていた。