不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
「えっ、あのっ――」
ますます混乱の渦に飲み込まれていきながら、しかし何をどう訊いたらいいのかすらもわからなくなってしまう。
そうこうしているうちに車は巨大なタワーマンションの地下駐車場へと入っていき、広い駐車スペースへと停められる。
周囲の車も綺麗に手入れされた高級車ばかりが並んでいた。
先に車を降車した桜坂社長が、私側のドアをわざわざ開けに来てくれる。
訳がわからないまま「すみません」と車を降りたものの、混乱は依然続行中だ。
「行くぞ」と車を離れていく桜坂社長についていくと、地下から一階へ向かうエレベーターへと乗せられる。
すぐに開いた扉の先には、高級タワーマンションの格式高いエントランスホールが待っていた。
中庭に面した数十メートルはあるガラス張りのホール中央は圧巻で、今は陽も落ち庭はライトアップで照らされている。
ホテルのようにコンシェルジュも常駐しているようで、ちょうど住人と届け物のの引き渡しを行っているところだった。
桜坂社長は迷うことなく私を先導して奥のエレベーターホールへと向かう。
四基あるエレベーターはすぐに「ポン」とライトを点灯させてそのうちの一基が到着し、誰も乗っていないその中へと乗り込んだ。
階数ボタンは二十階以上からとなっていて、桜坂社長はその一番最上階である三十六階を指定する。
あっという間に目的の階に到着し、足早に降りていく桜坂社長のあとに続いた。