不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
「ハァ……」
これまでも千晶さんのことはよくわからなくて、謎めいていると思いながら接してきていた。
それが、あの一件でますますわからなくなってしまった。
もう最近では、千晶さんのことが頭を占領している。
一日のほとんどの時間、千晶さんのことを考えてしまっていると言っても過言ではない。
タクシーがホテルへと到着し、バッグからスマートフォンを取り出す。
例のごとくドアマンに緊張しながらホテル内へと入っていったところで、握りしめていたスマートフォンが振動し始めた。
「はい」
『着いたか』
「あ、はい。今、ホテルの入り口を入ったところなんですが……」
そう言いながら、ロビーラウンジの向こうから千晶さんが歩いてくるのが目に入る。
少し光沢の入ったブラックスーツを着こなす今日の千晶さん。
普段からスーツ姿が素敵でときめいているけれど、今日はパーティーの席ということもあり特別な雰囲気だ。
頭のてっぺんからつま先まで抜かりがない。
本当にこの人と自分が関わり合いがあるのかと、そんなことをふと思ってしまうくらい眩しい。
そんな千晶さんと対面する寸前、自分のいつもと変わりない身なりに途端に肩身が狭くなった。
千晶さんは仕事後にそのまま来て問題ないと言っていたけど、本当にそのまま来てしまった。
このロビーにいることでさえ場違いな気がして、じわじわと落ち着かなくなってくる。