不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


 白地に鮮やかな小花のグラデーションが描かれた着物に金の帯。

 華やかで豪華な着物を着付けてもらうにあたって、髪もフルアップで美しくセットしてもらい、メイクも和装に合うものをプロにお願いした。

 支度が終わり出ていくと、サロンの受付で千晶さんが私を待っていた。

 出てきた私を、千晶さんがまじまじと見つめる。

 足の先から視線を上げて頭のてっぺんまでをじっくりと見られて、一気にマイナスな不安に襲われる。

 勝手な解釈で和装かもなんて思っちゃったけど、もしかして着物じゃなかった……?

 いや、それ以前に似合ってないとか……!?


「着物にしたのか」

「あ、はい……あの、ドレスのほうが良かっ――」

「見違えた」

 え……?

「着物がよく似合うな」


 無表情が多い千晶さんが不意に表情を緩めると、いつも以上に鼓動が跳ねる。

 連動して顔が熱くなり、反射的に目を逸らしてしまった。


「ありがとう、ございます……」


 眼下の着物に目をやり、「綺麗な柄ですよね」と誤魔化す。

 千晶さんはそんな私にまた「華やかでよく似合ってる」と言った。

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