不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
どうしようかと悩んだけど、着物という選択は間違っていなかったと内心ほっと安堵する。
でも、高鳴ってしまった鼓動はすでに落ち着かない。
衣装サロンを出ると、千晶さんは私へと手を差し出す。
もう何度か手は繋いでいるけれど、千晶さんのことを特別に意識しているとなんとなく気付いてからの触れ合いは初めてのこと。
このドキドキが伝わらないかと心配しながら手に触れた。
私の手を引き、千晶さんはエレベーターホールへと入っていく。
すぐに到着した一基に乗り込み三階を指定すると、振り返り私の頬に手を添えた。
思わずびくりと肩を揺らして顔を上げる。
「緊張してるのか?」
「えっ……」
「さっきから顔が強張ってるように見えるが」
そんな指摘に、慌てて左右に首を振る。
素直に緊張していると認めればいいものの、なぜか否定してしまった。
「大丈夫です」
「そうか? 特に難しいこともない。そばにいてもらえればそれでいい」
「はい、わかりました」