不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


 一気に押し寄せてきた濁流に流されてしまっているような、そんな状況の中にいる。

 さっきから、頭の中を〝婚姻〟という二文字が何個も何個もぐるぐる回っていて、行き場なくずっと旋回している。

 こんな縁もゆかりもない高級タワーマンションなんかに連れてこられてしまって、さっき桜坂社長は『用意した新居を案内する』なんてことを言っていた。


 こんなすごいところが……新居?

 いやその前に、一体……誰と誰の?

 私のだなんて言われたって、全く現実味が……。


 到着した最奥の部屋はカードキーのオートロックで開かれ、大理石の広々とした玄関フロアが現れる。

 圧倒されているうち、桜坂社長は革靴をきっちりと脱いで奥へと上がっていってしまう。


「あっ、あの……」


 ど、どうしよう!?


 ついていっていいものかと思いながらも、急いでパンプスを脱ぎ揃え後を追いかける。

 慌てて向かった先に想像を超えるリビングダイニングが広がって、その空間にあっと驚かされてしまった。

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