不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
「千晶、何か言ってなかった? あなたと結婚するのは先代が決めたことで、自分の意志ではないと」
「……はい、それは……本意ではない、と……」
そう答えると、桜庭さんは「そうよね」と薄っすらと笑みを浮かべる。
「あなたも気の毒よね、そんな話に振り回されて。でも、大丈夫よ。私たちの話が進めば、あなたは解放される」
え……ちょっと待って……私は、私は……。
「あの、ちょっと待ってください。私は、千晶さんと――」
「まさか、その気になってたなんてこと、ないわよね?」
私の話を遮る、威圧感のある声。
ぐっと喉の奥に声を押し込まれたように、続く言葉が出てこなくなる。
桜庭さんは真意を探るように私の目をじっと見つめてくる。
「みかど堂とうちのグループは業務提携もして、これを機に私たち自身の話も進めていくの。私たちの結婚はね、会社の発展のためでもあるのよ」
会社の、発展のため……。
「あなた……千晶の邪魔、したくないでしょ?」
千晶さんの仕事の邪魔になんて、もちろんなりたくない。
そう思いながらも、気持ちが話の内容に追い付かない。
膝の上で組んだ手を揉み合わせている私に、桜庭さんはバッグから何かを取り出す。
名刺の横に差し出されたのは、分厚い茶封筒だった。