不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


 急に立ち止まったことで、後から改札を通ってきた人の邪魔になってしまい、慌てて端に寄る。

 電話……?

 鳴り続けるスマートフォンを持ったまま、通話に応じる勇気が湧いてこない。

 それでも粘るように着信は続き、観念して画面をタップした。


「……はい」

『つぐみ、今どこだ』


 久しぶりに聞く千晶さんの声。

 この一週間、千晶さんから電話はなかった。もちろん、私からかけることもなく、こうして話をするのはなんだか久しぶりな感じがする。

 どこか焦ったような千晶さんの声に緊張が背中を這い上がった。


「今は……渋谷駅から電車に乗るところです」


 どうして電話なんて……そう思った時――。


『あれはどういうことなんだ』 


 電話の向こうの千晶さんはそう言った。


「京都から……お帰りになったんですか?」


 千晶さんの言う〝あれ〟……。

 それを見たということは、東京に、マンションに帰ったということになる。

 昨日マンションを出る時、置手紙を残してきたのだ。


『今さっき帰った。連絡が遅くなり申し訳ない』

「いえ……」

『とにかく、どういうことなのか会って話したい。そこにいてくれ、今から迎えに行く』

「あっ、え、いえ! 大丈夫です。それなら、私が……私がそちらに向かいます」


 迎えにこられて、車内で気まずい雰囲気になるのは避けたい。

 そういう思いから、自らマンションに向かうと言っていた。

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