不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


 別れを告げて出ていくはずだったのに、考えてもいなかった状況に陥り頭が働かない。


「あっ」


 千晶さんはそんな私へと更に迫り、押し倒すようにしてベッドに組み敷いた。


「離して、ください……私は――」

「嫌なら暴れて、噛み付いてでも逃げていけばいい」

「そっ、そんなこと……」


 できるはずがない。

 だって本当は、千晶さんのことを……。

 また視界が潤んできて、目尻から涙が溢れ出す。

 千晶さんは黙ってその涙を指で拭うと、舞い降りたような口付けを落とした。

 唇に触れる熱が優しくて、広がる戸惑いに胸が張り裂けそう。


 離れようと、忘れようとしているのに、どうしてこんなキス……。


「俺がどれだけ我慢をしてきたか……わからないだろ?」

「え……?」


我慢って、何を……?


「わからないよな……ずっとそばに置いて可愛がりたいと思ってたことなんて、隠してきたんだから」


 顎に指をかけ、千晶さんは私の顔を確かめるようにじっと見つめる。

 信じられない言葉に息をすることも忘れ、間近に迫った千晶さんを見つめ返した。

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