不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
「そんな……そんなはず……だって、千晶さんは……桜庭さんと、婚約をして……」
「……やはり、そういうことか」
言うつもりもなかった桜庭さんの名前を口にすると、千晶さんはひとり納得した様子で眉をひそめる。
でもすぐにその目元を優しく下げて、懲りずに流れる私の涙にキスをした。
「今は、外野はどうだっていい。そんなことより、お前の気持ちを聞きたい」
故障してしまうんじゃないかって思えるほど、心臓が音を立てて打ち付けている。
なんと言葉にしたらいいのかわからなくて、目の前にある千晶さんの胴体に両手を回していた。
私の想いを察してくれたように、千晶さんが私の髪を撫でてくれる。
「もう、抑えられない……後悔しないな?」
「後悔なんて、しないです」
その言葉通り、遠慮なく唇が塞がれる。
慈しむような優しい口付けは次第に情熱的になっていき、唇を割って千晶さんの熱い舌が入ってくる。
求めるように口腔内を動き回られると、大人なキスにすっかり息が乱れてしまった。
「っ……はっ、っ……」
息も苦しいけど、それ以上に鼓動が激しく音を立てて胸が苦しい。
私の唇を堪能した千晶さんの唇が、首筋を這い、デコルテに口付ける。
びくんと体を震わせてしまうと、私の胸元から顔を上げた千晶さんがクスッと笑った。
「つぐみ……他の誰でもない、俺が、お前を幸せにする」
誓いのような言葉と共に、また唇を奪われる。
こんな言葉を千晶さんの口から聞ける日がくるなんて思いもしなかった。
夢なんじゃないのか、そんな想いの中で夢のような時間が過ぎていった。