不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


「……美味しい!」


 口の中で広がる甘くて芳醇な香り。みずみずしくて口の中が一気に潤う。

 朝から寝起きのベッドで剥きたてフルーツに舌鼓なんて贅沢すぎる。

 なんだか急に大人の仲間入りをした気分にさせられる。

 千晶さんはコーヒーの入ったカップを手に取った。


「こんな日がくるなんて、想像もしなかった」

「え……?」

「許婚とはいえ、歳の離れたまだ若いお前を縛り付けるのは、正直可哀想だと思っていた。だから、自分の気持ちは封印するつもりでいたからな」


 知りもしなかった千晶さんの気持ち。

 歳の差を気にしていたのは私のほうだけではなかったのかもしれない。


「あの……私のことを、いつから……?」

「初めて会ったのはつぐみが五歳、俺が十八歳の時だ。覚えてないだろう?」

「五歳、ですか。それは、はい……」


 大人になってからの十三歳差と、子どもの頃の十三歳差では、同じでも全然違うように感じられる。

 私が五歳の時、千晶さんは十八歳……五歳の私から見たら、十八の千晶さんはもう立派な大人だよね……。

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