不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
「ああ。もし、心に決めた相手ができたなら、決められた結婚なんて苦しいだけだと思った。その時は、解放してやらないといけないと。だから、婚姻届も出さずにいた」
「そうだったんだ……」
「でも、一緒に過ごすうちに、つぐみの気持ちになんとなく気付き始めた。嬉しかった。単純に、嬉しかった」
触れた指が、さわさわと頬を撫でる。
それだけのことなのに胸がきゅんとして、頬が熱くなった。
「あの、じゃあ……前に寝ている私に『可哀想に』と、言ったのは……?」
「聞いていたのか」
「はい……それも、もしかして……?」
「許婚なんて可哀想に、という意味だった」
千晶さんの気持ちを知ると、全て〝そうだったのか〟と繋がっていく。
カップを置いた千晶さんが横から私を抱き寄せ、食べ途中のフルーツのプレートも取り上
げる。
おずおずと広い背中に両手を回した。
「週明けに、京都のほうに向かう」
「え、またですか?」
「今度はつぐみも一緒にだ」
そう言った千晶さんは、私のこめかみに唇を押し当てた。