不本意ながら、極上社長に娶られることになりました


「このお菓子は……?」


 掛けた私の前に置かれた、可愛らしい練り切りのお菓子。

 淡いパステルカラーのグラデーションがかった球体には、一面に小花がぎっしりと咲いている。

 一つ一つの花が精緻な細工で、その見事な姿に目が釘付けにされた。

 でも、『みかど堂』の和菓子には見たことがない。


「これから出す、新商品だ。つぐみに一番に見せたかった」

「綺麗……可愛いですね」

「『つぐみ』……」

「……?」


 名前を口にされ千晶さんの顔を見ると、穏やかな眼差しがお菓子へと注がれている。

 愛おしいものでも見つめるその優しい目に、思わずトクンと鼓動が高鳴った。


「この、菓子の名だ」

「え……?」

「つぐみをイメージして作った」


 思いも寄らない千晶さんからの言葉に瞬きを忘れてしまう。


 私をイメージして作った、つぐみっていう、お菓子……?

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