不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
「こんな、可愛いお菓子の名前に、私の名前を……?」
「これを仕上げるために、しばらくこっちに通っていたんだ。でも、寂しい想いをさせていたなら、本末転倒だな」
自嘲気味な笑みを見せる千晶さんに、「そんなことないです!」とつい力が入る。
ここのところ京都によく出向いていたのは、このお菓子のためだったのだ。
「嬉しいです……まさか、こんな……」
上手く言葉で喜びを表現できない。
その代わりのように涙腺が緩み、視界がゆらゆらと揺れ始める。
私を想って考えてくれたもの……こんなに幸せなことなんてない。
「つぐみ」
いつの間にか背後に回った千晶さんが、両手で私を包み込む。
見つめるお菓子から顔を上げ振り向くと、そっと唇を塞がれた。
「こうして連れてこられて、良かった……」
「千晶さん……」
回された腕に手を添える。
身をよじって振り返り、正面から千晶さんの胸に抱き付いた。
「千晶さん、私……わた――」
ガタンと、茶室の入り口戸が音を立てて、言いかけた言葉が止められる。寄り添った体を慌てて離した。
「困ります! こういったことは、ご遠慮を――」
「千晶っ!」