不本意ながら、極上社長に娶られることになりました
勢いよく開け放たれる茶室の引き戸。
そこに現れたのは、慌てた様子の千晶さんの秘書の方と、その制止を振り切って踏み込んできた桜庭さんだった。
桜庭さんは入ってくるなり、そこにいた私をキッと睨み付ける。
そして千晶さんに視線を移し、また訴えかけるように「どういうことなの?」と声を張り上げた。
「どういうこととは?」
そんな興奮状態の桜庭さんに対し、千晶さんは全く動じず落ち着いた声で対応する。
ちらりと見た千晶さんの表情は、口元には微笑を浮かべているものの目が全く笑っていなかった。
「お父様から聞いたのよ、うちとの契約は取りやめにするって。今更そんなことして、千晶の会社だって困ることになるわよ!?」
えっ……?
「うちは痛くも痒くもない」
「なっ、なんですって!?」
「なんだ、突き放したら脅しにかかるのか。それならうちも黙ってないぞ?」
余裕たっぷりの千晶さんに反論されると、桜庭さんは悔しそうに押し黙ってしまう。
また私を鋭く睨み付けた。